「うみ夷隅(いすみ)」を醸す木戸泉酒造さん

今月のお酒「うみ夷隅」。
搾りたてのお酒を扱うことの多い当プロジェクトでは珍しく、今月は半年寝かせたお酒をお届けいたします。

時期的にも「ひやおろし」、「秋あがり」(春先から秋まで蔵で寝かせ味わいがまろやかに乗ってくる9月以降に出荷されるお酒)が店頭に並ぶ季節でもありますので、まさに旬なお酒となります!!

「うみ夷隅」を造ってくださったのは、素晴らしい長期熟成・古酒の造り手としても根強いファンを持つ木戸泉酒造さん。
こだわりの酒造りや蔵の様子を、少しだけここでご紹介いたします。

場所は千葉県いすみ市。太平洋に面した外房の大原海岸にほど近い場所。

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「うみ夷隅」のラベル撮影と取材のために、日本酒にしようプロジェクトメンバーが蔵へ伺ったのは8月某日。
夏真っ盛りの暑い日でした。

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正面入口には、大きな杉玉が出迎えてくれます。

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入口脇には、熊の木彫りが木戸泉のお酒を抱えて佇んでいます。かわいい。

そして、木戸泉酒造の社長にこの8月より就任したばかりの5代目荘司勇人さん、蔵人でアメリカ人のJustin Pottsさんが出迎えてくださいました。

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木戸泉酒造さんは、寒い時期にしか酒造りを行わない「寒造り」をされているため、この夏の時期はお酒造りはされていません。
それでも、中へどうぞとご案内いただき、蔵の内部をゆっくりとご案内いただきました。

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蔵の内部は、木造を主体とした、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれる空間。

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手造りによる丁寧なお酒造りをモットーにされている木戸泉酒造さん。
使われている設備も、長い間大切に使われ続けていることが感じられます。

さっそく酒造りについて伺います。
木戸泉酒造さんのお酒の特徴は、なんといっても長期熟成に耐え得る「コクのある味わい、しっかりした酸」が特徴。
これは一度木戸泉のお酒を飲んだことのある方ならすぐに実感いただけるはずですが、木戸泉酒造さん独自の造り方にその神槌が隠されています。

木戸泉酒造さんで造るお酒はすべて「高温山廃仕込み」と呼ばれる独自のスタイルで造られます。
戦後間もない昭和31年から60年間もの間、それは変わっていません。

「高温山廃仕込み」の話は難しくなるためここでは割愛しますが、気になる方は以下、木戸泉酒造さんのホームページからご覧いただけます。

木戸泉物語(上)
http://kidoizumi.jpn.com/archives/30

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さて、この仕込み方で造られたお酒の特徴として、前述のとおりとてもしっかりとした酸を持つお酒が出来上がります。
また、長期保存に耐えうる酒質であることも大きな特徴です。

木戸泉酒造さんでは、当初から海外に目を向けており、長期輸送にも耐えうる日本酒づくりも目指していました。
昭和31年からチャレンジの始まった「高温山廃仕込み」は、失敗を重ねた末、昭和40年に長期保存に耐えうるお酒の商品化に成功。

いまでは木戸泉酒造さんは、長期熟成、古酒を得意とする酒蔵さんとしても有名です。
(取材時、30年以上の古酒を集めたギャラリー(敷地内)にもご案内いただきました。その内容は後日掲載します。)

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社長になられたばかりでありながら、杜氏としても酒造りの現場の指揮をとる若き荘司社長はこうおっしゃいます。

「日本酒といえば淡麗辛口がもてはやされた時代もありましたが、うちはずっとこの手法と味わいを貫いてきました。
先代が培ってきた60年間という時間をこれからも大切に守っていきたい。
それでも、新しいチャレンジも積極的にしていきたいです。」

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アメリカ人でこちらで蔵人をされるJustinさんも、そんな木戸泉酒造さんのこだわりのある酒造りに惹かれて仲間入りしたお一人。

「時間や手間を惜しんで、均質なものをつくるのが当たり前になってしまっている現代。
それが悪いとは思いませんが、「熟成」という、いくら工夫しても真似できないお酒のディメンションが失われつつあると思います。
木戸泉はあえてそこを守り、造り続けてきたことが魅力なのです。」

と目を輝かせて語っておられました。

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木戸泉酒造さんの古酒にはまったく期間が及びませんが、今月のお酒「うみ夷隅」は、この春より半年間蔵の中で寝かせてもらったもの。
少しでもこの木戸泉酒造さんらしい熟成酒の面白さを垣間見ていただけたらと思います。

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↑保管中の様子をJustinさんに撮影いただいたもの(2016年5月撮影)

「うみ夷隅」について、荘司社長から一言。
「しっかりとした酸が含まれることで、食事に合わせるのにぴったりな仕上がりになりました。”食中酒”として、是非秋の食卓に並べてお楽しみください。温度帯も変えて楽しむのもオススメです。」

「うみ夷隅」について、Justinさんから一言。
「今回お送りするお酒は古酒ではないけれど、その「熟成」という古くて新しいディメンションを感じることができると思います。
この熟成酒をきっかけに、その可能性や美味しさをもっと広く探ってもらえたら嬉しいです。」
   
   
「うみ夷隅」は、今月出荷を迎え、「半年熟成」のお酒として皆様のお手元にお届けいたします。
秋の味覚と共にぜひ、木戸泉の歴史に思いを馳せながら楽しんでみてください!
  
 
余談:

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撮影途中、「暑いでしょうから」と、蔵の方がカルピスを出してくださいました。
一同、ホッと一息。
    
 
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うみ夷隅の表ラベルの写真を撮影しに、荘司社長に車で連れて行っていただいた撮影スポットにて。
「やまうみそら」シリーズのラベルや小冊子デザインを担当しているアートディレクターが、体を張って撮影している後ろ姿。
 
 
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「いい景色だな〜」と、社長もJustinさんも一緒に柵によじ登り、皆でいすみの風景を撮影。

おつかれさまでした!

執筆者:豊田麻美