代表銘柄に『南部美人』を持つ岩手県二戸市の「株式会社南部美人」

国内外問わず人気上昇中で、南部杜氏の筆頭として活躍する、代表取締役社長の久慈浩介さんにお話を伺いました。

ーー久慈さんが変えてきたこと、努力してきたこととは。

まずは三増酒をやめ、品質向上に向けて故山口一杜氏と吟醸造りを様々に改良していきました。
南部美人のスローガンでもある「品質一筋」の基盤となっています。近年では、これまで2回火入れタンク貯蔵での出荷でしたが、南部美人の特定名称については上槽から瓶詰火入れ、－5℃倉庫へ保管を1週間以内、1回火入れ瓶貯蔵へ変更し品質向上を目指しました。

ーー仕込み水：県立自然公園折爪馬仙峡からの伏流水の特徴は？

酒蔵がある岩手県二戸市で一番大きな山、折爪岳（オリツメダケ）の水脈を使用した伏流水です。
夏の一番暑い時期の夜には、姫蛍という珍しい蛍が水源の周りを乱舞しています。水質データは中硬水ではありますが、飲み口がまろやかでデータよりも柔らかく感じます。

ーー品質を考えた火入れの特徴とは？

現在は上槽から瓶詰、火入れ、－5℃の倉庫に入れるまでを1週間以内に行い、よりフレッシュなお酒を楽しんで頂けるような管理をしています。
火入れはパストライザークーラー1回火入れが基本です。
火入れ時は5層の温水冷水（3層目をマックスの温度）にてライザークーラー、最終的に20℃前後まで冷やされたものを即座にマイナス5℃の倉庫に入れ保管しています。

ーー世界55か国への輸出・「コーシャ」認定、ヴィーガンの認定、そして「NON GMO」の認定の経緯は？

海外の方の反応は、10年前から比べると、日本酒の認知も広がり、反応もとても良いです。
ただ、まだまだ知らない方、飲んだことのない方が世界にはたくさんいらっしゃると思います。
これらの認証を取ることで、宗教・文化・食制限など身近に安心して手に取ってもらえるよう数年前から各種認証を取得しています。（食のバリアフリー化）

ーー今後の展望やそして新たな取り組み

パンデミック中、お酒の消費が減り、その影響でお米が余り、生産者が困っていたことから、それを救うためのライススピリッツ製品化（スピリッツ免許取得）、スピリッツ蒸留の知識や技術をもとに、2023年9月からウィスキーの製造も始めました（ウィスキー免許取得）。
日本酒、リキュール、スピリッツ、ウィスキーと様々なカテゴリーから様々な角度からより身近に「南部美人」を感じてもらえるようにと。
パンデミックも終わり人の往来も始まったことで、これまで倉庫としていた蔵をリノベーションし、市の中心、観光蔵として新たに始動もしています。

1902年創業、岩手県二戸市にある日本酒の蔵元。社名・銘柄名は、所在地が江戸時代に南部藩領（南部地方）だったことと、淡麗な味わいの酒を美人に例えたことに由来する。

地元岩手県産の酒米（「吟ぎんが」「ぎんおとめ」など）を中心に使っている。こうした地産を重視した高品質な酒造り、輸出や海外コンテストへの出品のほか、南部杜氏が酒造りのノウハウ（酒米の種類や精米歩合、気温に合わせた吸水時間の決定など）を人工知能（AI）に学ばせて継承するといった新しい取り組みを行っている。

5代目蔵元である久慈浩介代表取締役が、酒造りのかたわら、PR・プロモーション、海外市場開拓など渉外活動に熱心に取り組んだ結果、岩手の清酒では知名度の高い銘柄の一つとなった。

映画「カンパイー世界が恋する日本酒」にも主演し、国内外で高い評価を得ており、

現在では、特に独自の取り組みや商品開発に注力し、社会的な貢献も行っている。

高岡 麻彩（Maaya Takaoka ）

京都府出身。関西学院大学卒業。
日本酒サブスクリプションサービス「日本酒にしよう」CEO。年間50以上の酒蔵を訪問し、1,000以上の日本酒をテイスティング。燗酒コンテスト2021・ワイングラスでおいしい日本酒アワード2022審査員。きき酒師資格取得。
インドで「Sake box」をプロデュースし、海外の新規市場開拓にも貢献。「日本酒を知ることは、日本を知ること」をモットーに、日本酒は大切な文化であり、守り伝えていくべく国内外に活動を広げている。